パット数が少ない人ほどパターが上手い、わけではない

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「平均パット数が少ない選手はパターが上手い」。 そう思って順位表を見ると、おかしなことに気づきます。

2026年シーズンのLPGAでパーオン率1位のユ・ヘラン(世界3位)は、 平均パット数では133位です。

これは偶然ではありません。女子世界ランキング上位20人のデータを並べると、 パーオン率が高い選手ほど、1ラウンドのパット数は多くなるという関係がはっきり出ます。

データの時点: ランキングは Rolex Women's World Golf Rankings、 スタッツは LPGA 公式 の2026年シーズン(2026年10月時点)。 桑木志帆(12位)とMinsol Kim(15位)はLPGAの規定ラウンド数に達しておらず記録がないため、 以下の集計は18人が対象です。

上位18人のパーオン率と平均パット数

世界ランク 選手 パーオン率 (ツアー順位) パット数/R (ツアー順位)
1 ネリー・コルダ 71.91% 14位 29.19 15位
2 ジーノ・ティティクル 75.14% 2位 29.97 75位
3 ユ・ヘラン 79.04% 1位 30.49 133位
4 キム・ヒョージュ 66.99% 86位 28.41 2位
5 山下美夢有 71.19% 22位 28.87 6位
6 インルオニン 70.28% 37位 29.19 15位
7 ロティ・ウォード 72.89% 4位 30.10 94位
8 チャーリー・ハル 69.22% 52位 30.08 92位
9 キム・セヨン 70.69% 28位 29.48 33位
10 ハンナ・グリーン 70.83% 26位 30.02 79位
11 ブルック・ヘンダーソン 70.14% 39位 30.13 99位
13 リディア・コ 68.66% 59位 29.30 23位
14 ガビー・ロペス 69.39% 50位 29.29 22位
16 ミンジー・リー 63.89% 128位 29.65 48位
17 ローレン・コフリン 73.51% 3位 30.73 146位
18 西郷真央 70.02% 41位 30.36 122位
19 岩井明愛 67.63% 74位 29.17 12位
20 畑岡奈紗 67.88% 70位 29.73 54位

相関を取ると、はっきり正の値が出る

18人のパーオン率と平均パット数の相関係数は r = +0.505 でした。 正の相関です。つまり、パーオン率が高い選手ほどパット数が多い。

回帰直線を引くと、こうなります。

パーオン率が 1ポイント 上がると、1ラウンドのパット数は +0.092 打

パーオン率が10ポイント違えば、1ラウンドあたり約0.9打のパット数の差になります。 これは「下手だから」ではありません。

理由は単純です

パーオンしたホールは、ほぼ必ず2パット以上を打ちます。 一方、パーオンを外したホールは、アプローチを寄せて1パットで終えられることがあります。 うまく寄せればパー、寄らなくてもボギーですが、どちらにしてもパット数は1回で済みます。

つまりパーオン率が高い選手は、構造的にパット数が増えるのです。 グリーンを外してアプローチで寄せる選手は、パット数だけ見ると少なく出ます。

平均パット数は、パッティングの技術ではなく 「どういうゴルフをしているか」を強く反映した指標だということです。

両端を見ると分かりやすい

パーオン率トップ4(カッコ内はツアー順位)

選手 パーオン率 パット数/R
ユ・ヘラン 1位 133位
ジーノ・ティティクル 2位 75位
ローレン・コフリン 3位 146位
ロティ・ウォード 4位 94位

パーオン率トップ4が、全員パット数では下位に沈んでいます。

パット数が少ない上位3人(同じ並び順で見てください)

選手 パーオン率 パット数/R
キム・ヒョージュ 86位 2位
山下美夢有 22位 6位
岩井明愛 74位 12位

逆にパット数の少ない選手は、パーオン率が真ん中以下に多い。 キム・ヒョージュはパット数2位ですが、パーオン率は86位です。

上位20人は、ショットとパット、どちらで上位にいるのか

上位18人がツアー全体で何位あたりにいるかを平均すると、こうなりました。

指標 ツアー内順位の平均
パーオン率 40.9位
平均パット数 59.4位

世界ランキング上位の選手は、パット数よりパーオン率のほうが明確に上位です。 ツアー50位以内に入っている人数で見ても、パーオン率が12人、パット数は9人。

世界ランキングを押し上げているのは、まずショットだということが数字に出ています。 ただし先ほど見たとおり、パーオン率が高いこと自体がパット数を押し下げる方向に働くので、 この比較はパット数側に不利な条件が入っている点は差し引いて読む必要があります。

両方で上位にいる2人

この18人のうち、パーオン率とパット数の両方でツアー30位以内に入っているのは2人だけでした。

  • ネリー・コルダ(世界1位)— パーオン率14位、パット数15位
  • 山下美夢有(世界5位)— パーオン率22位、パット数6位

世界1位がちょうど両方を高い水準で揃えているのは、示唆的です。 構造的に両立しづらい2つの指標を同時に満たしている選手が、頂点にいるということになります。

では、パターの機種に傾向はあるのか

ここが本題のはずでした。 パーオン率が高い選手と、パット数が少ない選手とで、選ぶパターに違いはあるのか。

結論から言うと、読み取れませんでした。 そして読み取れない理由のほうが重要です。

分かっている範囲では、こうなっています。

選手 特徴 パター
ローレン・コフリン パーオン率3位 / パット数146位 Ping PLD Oslo 4(マレット)
キム・ヒョージュ パット数2位 / パーオン率86位 Odyssey O-Works Tour R-Ball S(マレット)
ネリー・コルダ 両方上位 TaylorMade NK プロト(マレット)
リディア・コ パット数23位 Scotty Cameron Phantom 12 ツアープロト(マレット)

正反対の成績の選手が、どちらもマレットを使っています。 ブランドもバラバラです。ここから傾向を引き出すのは無理があります。

傾向が出ない最大の理由

選手がパターを頻繁に替えるからです。

ALBA の記事で クラブフィッターの吉川仁氏が解説しているとおり、山下美夢有は 日本ツアーで年間女王になった2023年、1年間で5本のパターを使っています。 2026年も、前年のエースだった「スパイダーツアーX」から、 オデッセイのゼロトルク系「スクエア2スクエア TRI-HOT ジェイルバード」をテストしていたと報じられています。

パーオン率1位のユ・ヘランにいたっては、メジャーである全米女子プロ選手権の開催期間中にパターを交換しています。 ショートパットを外すから、という理由でした。

つまり「このシーズンのこの選手のパターはこれ」という一枚の写真を撮っても、 それはその週のものでしかありません。 その状態でブランドを数えて成績と結びつけても、意味のある分析にはならない、というのが実際のところです。

読み方のまとめ

平均パット数という指標は、そのままではパッティングの上手さを表しません。 パーオン率が高いほど数字は悪化し、グリーンを外して寄せる選手ほど数字は良くなります。

PGAツアーには SG: パッティング(ストロークス・ゲインド)という、 この偏りを取り除いた指標があります。残念ながらLPGAは公開していないため、 今回はパーオン率と並べて読むという方法を取りました。

自分のスコアを振り返るときも同じです。 パット数だけを見て「今日はパターが悪かった」と判断する前に、 何回パーオンしたかを一緒に見てください。 パーオンが多かった日は、パット数が増えて当然です。

自分のパットがどれだけ曲がり、どの強さで打てばよいかは、 Putt Break Calculator で計算できます。 傾斜とグリーンの速さを入れるだけで、曲がり幅と必要な強さが数字で出ます。


出典: Rolex Women's World Golf Rankings、 LPGA 公式スタッツ(2026年シーズン)、 ALBA Net「山下美夢有の試行錯誤がうかがえる14本」(2026年6月22日)、 各選手の WITB 報道。相関係数と回帰係数は、上表の18人から当サイトで計算したものです。